“熱源”人材 - NETSUGEN JINZAI

岩手

海は、強み。産地の可能性そのもの

宮古の味を守る!熱いイカ王子

鈴木 良太

RYOUTA SUZUKI

PROFILE
生年月日
1981年11月8日
主な活動エリア
岩手県内
共和水産株式会社代表取締役専務。岩手県宮古市出身。
東日本大震災が起こった2011年に30歳で2代目代表に就任。自ら「イカ王子」と名乗り情報発信を始める。翌年に地元の若手後継者らと「宮古チーム漁火」を結成し、以来、海産物のブランド化に協業で取り組む。異業種コラボで開発した「王子のぜいたく至福のタラフライ」はインターネット販売で大ヒット。

「美味しい!」を産地に増やしたい

世界三大漁場の一つ、三陸。その海岸沿いにある宮古市に、『イカ王子』はいます。
イカ王子。そのチャーミングな称号の裏に熱い想いを秘め、ふるさと宮古を水産の特産品で盛り上げようと挑み続けている人こそ、鈴木良太さんです。

「東日本大震災で地域も会社も大打撃を受け、その惨状の中、自分に何ができるのかを必死で考えました。答えはシンプルで、結局宮古は水産のまち。そして俺は水産の人間だと。俺ができる“泥かき”は、水産加工で地域を盛り上げることだと。でも当時の俺はまだハートが弱かった。自分を変えて強くなりたいと思って、敢えて『イカ王子』を名乗ったんです。決してふざけてたわけじゃないんですよ(笑)メッセージ性や話題性も大事な目的ですが、むしろ自分を世の中に晒すことで追い込むというか…腹を括ってこの地域で生きていくぞ!という覚悟ですね」
イカ王子の登場は、鈴木さんにとっては決死のファイティングポーズでした。

その後は会社のホームページ等でイカ王子として発信を始め、イカ王子を名前に使った商品を含め、共和水産の加工品から続々とヒットが生まれました。宮古で水揚げされた肉厚なスルメイカを使った「いかそうめん」の冷凍シリーズは不動の看板商品に育ち、現在は一日に2万~2万5000食を製造しています。

(↑)ニューヨークでいかそうめん試食販売を行ったことも。王冠をかぶったイカ王子がマンハッタンの街をゆく…

一方で、震災後に地元の水産仲間と立ち上げた「宮古チーム漁火」では、各々の得意を生かしてノウハウや販路を共有することで業務を効率化し、新製品の開発や、台湾やアメリカなど海外での販路開拓を一緒に進めてきました。

「チーム漁火は自分にとって本当に大切な存在で、いつも仲間に支られています。一緒に取り組むメリットは大きくて、チーム全体での売上げは震災前と比べて3倍以上になりました。これから他の業者とも連携を広げていけたら、宮古の水産業界の底上げに繋がるはずだと考えています」

地域の宝を生かし切ることを使命とする鈴木さんは、イカ以外の水産物にも光を当てています。例えばタラ。宮古港は真鱈(マダラ)の水揚げ量が日本でトップクラスですが、その魅力をアピールする加工品が乏しいのが課題でした。そこで、地元の異業種3人で発足したプロジェクト「三陸王国イカ王子」(代表=鈴木さん)で「王子のぜいたく至福のタラフライ」という新商品を開発したところ、大当たり。人気テレビ番組で紹介されたことも後押しし、ネット販売で数ヶ月待ちの大人気商品になりました。

「王子のタラフライは今では地元のソウルフードになりつつあると自負しています。宮古でずっと愛されていたものを、手軽で美味しくお腹いっぱい食べられるような加工品としてブランド化する。まさに俺が目指していたことを実現できたのが、この商品です」

「共和水産として売る大ロット製造のいかそうめんと、地元向け商品や、こだわり抜いた少量生産の商品では、ターゲットに応じて加工や味つけを変えていますし、売り方も販路も戦略的に選んでいます。特にいかそうめんは宅配が強く商品種類も多いですが、コンビニでは決して売りません。新型コロナ時代にも対応するため、宅配やネット販売には更に強くなりたい。魅力ある商品を作るだけではなく、狙ったお客様にちゃんと届けるということが大事ですね」

会社では仕入れから製造、営業まで何でもこなすのは当たり前。その他にも「イカ王子の魚市場ツアー」など観光と水産の融合を試みたり、地元で「イカ王子塾」と呼ばれている実践型インターンを行ったりと、地域おこしや教育、人材育成の分野にまで活動の幅を広げている鈴木さん。ベースにあるのはやはり、宮古愛です。

「地域に多様な若い人材を増やして、もっと宮古を盛り上げたいですから。そして俺の軸はあくまで海と水産。海は地域全体で守るものだし、そのためには、宮古で水揚げされた水産物を地域のみんなが愛し、美味しく食べていることが大前提だと思うんです。産地のすごさを見せつける加工品をこれからも作って、発信して、それを地域のパワーに変えていきたい」

宮古だからできる。その信念は揺るぎなく、イカ王子には希望しか見えていません。

★ 編集後記 ★ 実はこんな人!

「食うために生きてます」と断言するほど飲食が好きで、時間があれば調理法や冷凍法の研究に没頭。イカふ(=イカのわた)を夜な夜なかき混ぜて、いろんな塩で発酵させて味の違いを食べ比べてみたりと、とにかく美味への探究心が尋常ではないマニアック王子。

自分を海の生き物に例えると?

「スルメイカ!食べ方のアレンジが無限大で、その柔軟性が自分っぽい。あとイカは鮮度が高ければ高いほど美味しくて、しかも1年魚。遠い未来より一瞬一瞬を鮮やかに熱く生きるのが俺の生き方なので、そういうところもイカと同じだな」

イカ愛溢れるイケメン、いやイカメン。「イカみたい!」は王子にとっては褒め言葉なんですね…