“熱源”人材 - NETSUGEN JINZAI

兵庫

海は、エンタテイメントの源!

奇跡の「海の映画館」を叶えた男

大継 康高

YASUTAKA OTSUGI

PROFILE
生年月日
1982年2月7日
主な活動エリア
京都市と週末前後は淡路島
株式会社海空(うみぞら)代表取締役社長。映像ディレクター、イベントプロデューサー。兵庫県淡路島洲本市出身。
京都の映像制作会社で経験を積み、2012年に海空を設立(オフィスは京都市と淡路市)。自ら企画した「うみぞら映画祭」を淡路島の大浜海水浴場で2016年から開催。

映画祭×地元民のパワーで島を元気に、海を綺麗に!

「淡路島の海にスクリーンを浮かべて、映画を上映したいー」
そんな想いを温めながら、京都で映像制作の仕事をしていた大継さん。制作会社勤務を経て2011年に独立し、その翌年、30歳で「海空」を設立しました。

「勤めていた会社がすごく忙しくて、僕はもっとのんびりじっくり働きたいと思って独立しました。昔はごくたまにしか淡路島に帰れなかったけれど、地元の海を見ると心底ホッとする。自分にとって海は、疲れた心を癒してくれる大切な場所でした。その砂浜でくつろいでいる時にふと、ここで映画を観れたら最高だなぁと思いついたんです。いつか“海の映画館”をやってみたいなと」

起業して4年目の2015年春、その無謀とも思える企画の実現に向けて、大継さんは本格的に動き出します。

「その頃、映像制作の仕事が少なくなって会社としてはピンチでした。でも逆に、今こそ昔からやりたかったことに挑戦するチャンスだと思ったんです。会社を立ち上げた時の『自分らしく新しいことをやろう』という初心にかえって、夢を叶えたいという想いに素直に行動しました。淡路島に通って協力者を探し始めると、意外なほど多くの人が応援してくれて、地元の島民のポジティブな気質を感じましたね」

そして、淡路島を舞台にした映画の製作と映画祭の開催を目的に、「海の映画館をつくろうプロジェクト」を発足。最大の難関だった、スクリーンをどうやって海上に立てるかという問題は、クレーン会社の社長をしている地元の先輩にお願いして巨大クレーンで吊り上げるという方法で解決しました。
そのほか多数の地元民の賛同と協力のもと、海上のスクリーンに映す前代未聞の映画上映、しかも淡路島にちなんだ映画や海が舞台となった映画を、砂浜でくつろぎながら波音や潮の香りに包まれて楽しむという「うみぞら映画祭」が、現実のものとなりました。

会場は、白砂青松が美しい遠浅の海水浴場、大浜海岸です。
第1回は2016年9月で、この映画祭のためにオール淡路島ロケで製作された映画「あったまら銭湯」(淡路島出身俳優の笹野高史さんらが出演)も上映され、3日間で約3000人を動員しました。翌年からは台風シーズンを避けて5月開催となり、屋台やマーケットエリアを設置するなどイベント内容が年々充実。2019年の第4回にはスクリーンもクレーンも大きくし(440インチのスクリーンを50tクレーン2台で吊り上げた!)2日間で約6000人を動員。
また2019年は「ひょうご瀬戸内ごみゼロ青年団」の活動として、映画祭開催と同時にビーチクリーンも行いました。

「映画上映前にみんなで海岸のごみ拾いをしたら、撤収時にごみがほとんど無いほどの効果があって驚きました!来場者の皆さんには、映画祭に来て楽しかったな~だけじゃなくて、海を綺麗にしなきゃいけないなって感じてもらいたい。結果的に、より気持ちの良い空間で映画を楽めるということに繋がっていきますしね」

観光業者をはじめ多くの地元企業の協賛を得ることができ、大勢の共感を集めたことで、大継さんの意識にも変化がありました。

「やりたいからやるという動機に加えて、『淡路島のために』『地元の海のために』という使命感が芽生えました。あと、僕が無謀な挑戦に楽しそうに取り組んでいる姿を見て、地域の若者たちの中に何か新しいことにチャレンジする気風が生まれたようです。淡路島でも面白いことができるんだぞって示せたんだとしたら、とても嬉しいですね。うみぞら映画祭まだまだ続けなきゃ!って思います」

島の人たちと一緒に作り上げる、地元愛と海への愛をともに育てる特別な映画祭。2020年は新型コロナウイルス対策のため中止でしたが、2021年5月の開催に向けて着々と準備を進めています。

「これからも、映画を通して淡路島の魅力や海のある景色の素晴らしさを再認識してもらえるようなイベントであり続けたい。うみぞら映画祭に興味を持ってもらい、そこから淡路島の海に興味を持ってもらうことで、若い世代を中心に海を守っていくアクションを起こせればいいですね。ビーチクリーン活動を大浜海岸だけではなく島内の他の海や島外にも広げたり、市町村をはじめ様々な団体と連携した広くて深い活動を、熱意をもってやっていきたいです」

★ 編集後記 ★ 実はこんな人!

2020年はやむなくオンライン開催でしたが、映画出演者のトークショーを配信するなど新しい試みも。「ネットやSNSをもっと活用して知名度を上げていきたいので、今年は生配信のノウハウを勉強できて良かった。海で楽しむエンタメとして、全国規模に育てていけたらいいな~」とあくまで前向き、夢は尽きない模様です。

自分を海の生き物に例えると?

「ジンベエザメ。のんびりと自分の思うように動いていると、気づいたら一緒に誰かが泳いでいる。同じ方向を見ている人がいつの間にか周りにいっぱいいる。幸せですよね、そういうの」

たった一人の挑戦から、大継さんを応援する淡路島の仲間たちみんなの挑戦へと変わっていった、うみぞら映画祭実現へのプロセスと同じですね。ドラマチック!