残したい海がある。考えるのはいつも次世代のこと。
漂着ごみの回収・調査から海の環境問題解決を目指す、長崎大学のサークル「ながさき海援隊」の6代目代表。毎月1回の海岸清掃とICC調査(*)、海ごみに関する啓発活動や出前授業などを行っており、これ一つでも大変そうな肩書ですが、瓜生さんは海援隊の他にも10近い団体で精力的に活動しています。
「やりたいことを全部やっていたら、いつの間にかこんな状態に(笑)。忙しいですけど、海洋・水産の軸はブレていませんし、フィールドが広がっていくのはとても楽しいですね」
(*)ICC=国際海岸クリーンアップ(International Coastal Cleanup)の通称。世界中の海に面した国や地域で一斉に海岸の清掃を行うとともに集めたごみの品目別個数を調べ、その結果から改善策を考えて提言していく国際的な活動。
瓜生さんが海と関わる道を志したのは、中学2年生の頃。夏休みにオーストラリアのゴールドコーストへ短期留学した際、裸足で砂浜を走った時にごみを見つけ、「子どもたちが安心して走れる砂浜をずっと残したいな」という想いが芽生えました。
その後は水産高校へ進学し、海洋環境の保護について学びを深める日々。放置竹林の問題と海洋環境改善とを同時に解決しようと、山で伐採した竹で「竹漁礁」を作って海底に設置するというプロジェクトにも取り組みました。
「竹漁礁は、稚魚の隠れ家や養育場、アオリイカの産卵礁としても機能することを確認しました。設置1年後には朽ちた竹から海藻が生えていたので、磯焼け問題を解決する可能性を見つけたと思っています。この竹漁礁づくりは、宗像国際環境100人会議のフィールドワークとしても採用されました」
高校3年時には生徒会長として、砂浜を含む学校周辺の清掃活動を全校を挙げて実施。全校生徒約400人のほか漁師など地域住民をも巻き込みながら環境保全の意識を高めていく活動に大きな喜びと充実感を感じ、この経験がその後の人生の大きな糧となりました。
長崎大学で入隊したながさき海援隊は、海ごみ清掃だけではなくICC調査や独自の定点観測を行っており、市内各地の海ごみの量や割合を分類したデータは長崎市の海ごみ啓発事業のデータ根拠としても活用されています。そのような調査を含め、海ごみ問題の現状を発信し地域全体を良くしようと活動していることが評価され、ながさき海援隊は「~長崎市民が選ぶ市民活動表彰~ランタナ大賞2018」で大賞を受賞しました。
また、学生として水産学を学ぶ傍ら、海洋未来イノベーション機構の大学職員としての顔も持つのが瓜生さんの凄いところです。
「日本財団・JASTO(一般社団法人日本先端科学技術教育人材研究開発機構)・リバネスが立ち上げた、海ごみ削減を目指す『プロジェクト・イッカク』という異分野協業の取り組みの中で、『衛星・ドローンによるごみ漂着状況診断システムの構築』という研究チームに僕も事務補佐で関わらせてもらっています。この研究は簡単にいうと、海ごみの天気予報を作るイメージです。将来的には地球レベルでのごみ漂着予測ができるかもしれない。未来をつくる最先端技術の研究支援に携われることは、とても刺激になりますね」
モチベーションの衰えを知らず、挑戦の意欲は尽きず…「自分の力を試してみたい」と、来年度は大学を1年休学して長崎市の任期付き職員として働くことを決めています。ただ、瓜生さんの軸はあくまで海。日本の水産業界の課題の一つは、水産業や海洋環境について若いうちからハイレベルな勉強ができる環境が整っていないことだと考えており、その現状を変えるため、「海を広く深く学べる学校」を作ることが夢だと言います。
「実は、海に関わる教育者になりたいという想いがありました。が、大学で水産を学び現状を知るうちに考えが変わり、先生になるよりも学校を作ろう!と思いました。志のある人が行きやすいよう、高専(高等専門学校)がいい。日本にはそれが必要だと思う。僕はやりたいことが本当に山ほどあって全部はできそうにないので、今回の人生は、学校を作って海を守る人材を育てることに使いたいな、なんて考えてます」
1回の人生では足りず、来世まで視野に入れているとは。。。
齢20歳にして既に次世代を見据える、この“大物”感。日本の水産業界を変えうる熱い逸材の一人が、長崎にもいました!