“熱源”人材 - NETSUGEN JINZAI

岩手

海は、遊び場。

海を遊びこむカヤック乗り

川村 将崇

MASATAKA KAWAMURA

PROFILE
生年月日
1992年3月4日
主な活動エリア
岩手県下閉伊郡山田町内
GEOTRAIL代表。岩手県下閉伊郡出身。
JSCA(日本セーフティカヌーイング協会)公認インストラクターとして、シーカヤックによる体験型観光で地域おこしに取り組む。人気のうどん専門店「釜揚げ屋」の2代目でもあり、地元食文化を盛り上げるため特産品を活かしたメニュー開発も行う。

楽しめば好きになる。海を守りたくなる!

日本財団が実施した「海と日本人に関する意識調査」(*)で、子どもの頃に楽しい海の思い出がある人は、大人になってからも海へ行きたいと思ったり、環境問題に配慮したりする傾向があることがわかりました。すなわち、海を楽しむ体験こそが海を大切にする人をつくるということです。

「でも今、大人も子どもも海での遊び方を知らない人が増えているんですよ。だからこそ私が、“海で遊ぶプロ”として色んなことを伝えたい。さらにその海体験を観光コンテンツにして、交流や地域おこしにも繋げられたらいいですよね」

そう語る川村さんは、大好きなマリンスポーツ「シーカヤック」を山田町の体験型観光の目玉にしようと、インストラクターとして活躍しています。
川村さんのフィールドは、リアス式海岸で知られる三陸のほぼ中央に位置する山田湾。山田湾は陸に囲まれた大きな湖のようで、「海の十和田湖」とも称されるほど波が穏やか。カキやホタテ等の養殖が盛んで、シーカヤックの場所としても最高の環境なのです。

「とは言え、山田湾でもともとシーカヤックが盛んだったわけではありません。漁師が多く、昔から海は仕事場でありアクティビティの場ではなかった。でも東日本大震災の後の復興ムードの中で、山田でも観光に力を入れようという流れが生まれました。そこで、私が小学4年の頃からずっと親しんできたシーカヤックで人を呼べないだろうかと、体験型交流観光への挑戦を始めました。シーカヤックは海を自由に漕ぎ、陸からは行けない場所にも上陸できたりするのが醍醐味。その体験に魅了されてリピーターになる方も多いです。起業して5年、お陰様で交流人口の増加に貢献できています」

2代目である家業の「釜揚げ屋」は1985年創業のうどん屋で、震災以前から入店待ちの行列が当たり前の繁盛店。三陸産の海藻たっぷりの磯うどんや、山田湾のカキの天ぷらうどんのほか、地元食材にこだわったメニューや自社開発の特産品を揃え、町外からも多くの客が訪れます。2020年10月には店内を改装して席数を倍にし、地元の海産物をその場で焼いて味わえるコーナーも新設して客足はますます増加傾向。シーカヤックは冬季休業とは言え、うどん屋の厨房との“二足の草鞋”はさぞ大変かと思いきや…
「いや逆に面白いんですよ!私は、体験型観光と地域の食べものを繋げたいんです。シーカヤックした後に店でうどんを食べ、さらにカキとホタテの浜焼きを堪能し、おみやげ用に海の特産品を買って帰る。地元密着のエンタテイメントですよね」

シーカヤックや食を含む“山田ならではの体験”を求める観光客が増える中、川村さんが大きな課題だと思っているのは、海ごみです。

「ごみ対策として、まずは海を大切に思う人を増やす。このためにシーカヤックで海に親しむのは有効だと思って取り組んでいます。
もう一つは、ごみを回収する方法を探す。三陸には海ごみを回収する会社が無く、各地域で砂浜の管理にとても苦労しています。そこで、無いなら作るしかないかなと。ごみと砂を分けて回収できる『ビーチクリーナー』という機械を導入して、ビーチクリーンの会社を新しく作ってしまおうと準備中なんです。三陸全体のニーズに応えられるはず!」

海ごみ回収事業も含め、やりたいことが山ほどあってマンパワーが足りないと苦笑する川村さん。
「東北にはみちのく潮風トレイルというコースがあるので、トレイルのガイド業もやりたいんですけど、今は忙しくて…。未来の仲間であるUターンがもっと必要です。地域の人材が戻ってきたいと思うように、ふるさとの海への愛着を増やさなきゃいけません。そのために自分は、シーカヤックと食の充実で、観光客だけじゃなくて地元の人に向けても、遊び場としての海の魅力を発信し続けたい。『海、楽しいな!』という体験が、元気な地域や綺麗な海への第一歩だって信じてます」

(*)「海と日本人に関する意識調査」 (2019年)
・対象:全都道府県15歳〜69歳の男女 (男性5,800 女性5,800)
・有効回答数:11,600
・期間:2019年5月24日〜6月3日
・調査方法:インターネット調査

★ 編集後期 ★ 実はこんな人!

“海遊びのプロ”には、伝統芸能の達人という一面も。鹿踊(ししおどり)の一つ、山田町に伝わる「八幡鹿舞(はちまんししまい)」の舞い手でもあり、伊勢神宮で奉納の舞いをしたこともあるとか。文化継承の面でも地域を支えています。

自分を海の生き物に例えると?

「サケ!一度はふるさとを離れてもちゃんと戻ってくる。そんな人間をもっと増やして、地元を元気にしたいなぁ」

長旅をして大きく育ち、母なるふるさとに戻るサケ。困難に打ち勝って遡上してくるタフなイメージも良いですね!“鮭ターン”の若者が増えますように。