“熱源”人材 - NETSUGEN JINZAI

青森

海は、暮らしの場所。

漁師に寄り添う技術開発者

桐原 慎二

SHINJI KIRIHARA

PROFILE
生年月日
1957年12月16日
主な活動エリア
青森県内
弘前大学地域戦略研究所教授。岩手県盛岡市出身。
専門は応用藻類と水産物の増養殖で、主に青森県の水産試験研究機関において、海藻を中心にアワビやナマコなどの生態研究や増養殖技術の開発に取り組んできた。2016年4月から現職(*当時の名称は弘前大学北日本新エネルギー研究所)。海洋エネルギーの利活用へと研究分野を広げている。

漁師目線で、海・人・地域の共存共栄を

青森は陸奥湾を中央に抱き、三面を海に囲まれた県。日本海を北上する対馬暖流の一部が津軽海峡に入って津軽暖流となり、北からの親潮(寒流)、南からの黒潮(暖流)とがぶつかり合うことで、多くの魚が集まる日本有数の好漁場が形成されています。また、陸奥湾にはぐるりと囲む山々から栄養豊富な水が注がれ、波も穏やかなことから養殖が盛んで、特にホタテの産地としても有名です。
そんな水産県・青森で、長年に渡り漁業者の後方支援にあたるのが桐原さんです。水産資源を効果的に増やしたり、海の環境を修復したりするためのさまざまな調査や技術開発に心血を注いできました。

専門はマコンブなどの海藻類で、その生態に関する数多くの研究成果は、“海のゆりかご”とも呼ばれる藻場(もば)造成の公共事業等に活かされています。さらに、定着性水産生物であるアワビ、ウニ、ナマコなども桐原さんの得意分野。つぶさな生態調査と実証実験から得られた知見をもとに編み出される増養殖技術には独創的なものが多く、例えばこんにゃくを偽ナマコに見立てて漁場にばら撒くことでナマコの資源量を推定したり、エゾアワビの種苗を食い荒らすイトマキヒトデをニチリンヒトデを使って追い払う手法を開発した時には、メディアでも話題になりました。

「ホタテの貝殻を利用してナマコ増殖に成功した時もテレビで紹介されました。ホタテの殻を海に撒くと、浮遊しているナマコの幼生が殻に付いて定着するので赤ちゃんナマコがどんどん育ち、湧くように増えるんですよ!かつて国道沿いには溜まりに溜まった30万tを超える貝殻が積み上げられていて、それらは産業廃棄物になるのでむやみに海に戻せず漁師さんたちは困っていました。その殻をうまく使って稚ナマコの発生場を造る手順を確立できた時は、とても嬉しかったですね。漁業者の役に立てることが一番の喜びですから」

現在の職場である研究所に移ってからは、よりスケールの大きなテーマにも取り組んでいます。それは、豊かな海洋エネルギーの利活用。目指すのは漁業と洋上風力発電とが共生・共栄する道です。

「青森県沖は風況に恵まれて洋上風力発電に適しており、今年7月には国が開発を先行的に進める『有望な区域』として県内の2区域が指定されました。今後は、発電設備の水中音が水産生物に与える影響を調べたり、藻場を造成することで水中音を低減する技術の開発などが必要になります。洋上風力を漁業に活かすにはどうしたら良いか。漁業者はもちろん地域住民が納得できるような、より良い地域づくりに直結する漁業ビジョンを示していきたいです」

長年の経験からフィールドを熟知し、地域の課題や漁師の悩みを分かっていることが桐原さんの強みであり、モチベーションの源でもあります。

「海は漁師さんが生活の糧を得る場であり、100年後も今と変わらず暮らしの海であって欲しい。そのために自分が出来ることは何でもやります。青森の漁業が持続的な成長産業として脚光を浴びる未来が見たいですから」

人と海とが共に生きていくために、地域密着かつ漁師密着型の技術屋、桐原さんの研究に終わりはありません。

★ 編集後記 ★ 実はこんな人!

同じ大学の仕事仲間から「海藻おじさん」と呼ばれることもあるほど海藻に関する知識は圧倒的で、「海藻のこととなると1つ質問したら答えが100返ってきて困る」という証言も。

海の生き物は何が好き?

「う〜ん、難しいですね・・敢えて言うならば、海洋細菌」

・・・先生、そこは海藻じゃないんですね(笑)