生の声、出会いのワクワクを教材に
独創的な授業が注目された名物先生は、教員を辞めた今も地域の教育魅力化を牽引するキーパーソンです。
「現場で発見する」「交流から学ぶ」をモットーに、学校から地域へ飛び出すフィールドワークや、アートや伝統芸能の専門家を招くワークショップなど、斬新な学校教育を展開してきました。世界遺産「石見銀山」を筆頭に、国指定天然記念物「琴ヶ浜」や国立公園「三瓶山」といった地域の宝、守るべき海や森を学ぶには、とにかく現場へGO。
「琴ヶ浜の鳴り砂学習では、砂が鳴るメカニズムだけでなく、古来から伝わる琴姫伝説の話を聞きます。浜を丸ごと体感して初めて、綺麗な砂が大切に守られているからこそ鳴るのだという意味と価値が腑に落ちるんです。漁師さんに協力してもらった地引き網体験も同じです。現場の体験とそこに暮らす人の生の声こそが、子どもたちの好奇心を震わせます。そのような学びを繰り返して世界を広げていく中で、ふるさとの自然を守ろうっていう想いと行動が生まれていくはず」
2017年からは、海と日本プロジェクトinしまね実行委員会による夏の体験イベント「隠岐の島発見隊!離島で学ぶ海の未来」にも、教育の視点からカリキュラム作りに加わっていて、毎年、子どもたちとともに隠岐諸島へ渡っています。
「ダイナミックな地形、貴重な生態系を目の当たりにしました。参加した子どもからは、新鮮な魚の味に感動して、それ以後は家でも魚を食べられるようになったという報告もあり、このインパクトこそ真の気づきだと、まさにいのちを感じる体験をしたんだと思いましたね」
自ら学びつづけ、実行の人でありたいという情熱も健在です。
「海をはじめとした環境問題について、自分に何ができるかを常に考えて行動をおこす。志を持って動けば仲間ができる。そんな仲間たちと一緒に、未来の地球を守っていく子どもを育てるのが夢です。
子どもたちを素敵な大人とたくさん出会わせてワクワクさせたいし、便乗して私も出会いたい(笑)。海に関わる仕事に従事する方々から経験に基づく生の声を聞き取ることで、海の大切さを伝える魅力的な教材を生み出せると思うんです。私もまだ進化の途中。海は、子どもはもちろん、私の可能性も広げてくれるって信じています」