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伝統の「海女」の世界を体験!~名言出まくり回です~【三重県 賢島編】

門脇大樹

三重

WEST

三重県賢島(かしこじま)
この一帯は伊勢志摩国立公園に含まれる風光明美な土地で、
賢島は、英虞(あご)湾の中で最も大きい有人島です。
養殖真珠の発祥の地であり、2016年5月には
G7伊勢志摩サミットが開かれたことでも注目を浴びました。

今回この地を訪れた目的は、お会いしたいみなさんがおられるから。
…そう、海女(あま)さんです!
海女とは、素潜りでアワビやサザエ、海藻などを採る
「海女漁」を行う女性たちのこと。
その歴史は、なんと縄文時代にさかのぼります。約3000年も続いてきた伝統なんです!
海士さんの数は、全国的に減少していますが、三重県では今も約800人の海士さんが活躍されていて、
その数は、もちろん日本一です。

「海女は50秒の勝負」という言葉があるそうで、
漁では、限界ギリギリまで息を止める潜水を何度も何度も繰り返します。
「鳥羽・志摩の海女漁の技術」は、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。

そのすごさを肌で感じてみたい!ということで、
志摩市の賢島で、海女漁体験にチャレンジすることに!
今回師匠になっていただいた海女さんは、杉山直子さんです。

なんと北海道帯広市出身で、賢島に暮らして15年、海女歴は7年とのこと。

さて、船に乗り込み、いよいよ海女体験です。

体験する場所は、英虞(あご)湾にある間崎(まさき)島の周辺で、
深さは2~3mという海域です。

漁に使うのは、カギノミ(写真:右手に持っている道具)。
サザエやウニを採る時に使う、一方がカギ状に曲がったノミです。
スカリ(獲物を入れる網の袋)をぶら下げて
海面に浮かせておく浮き輪のような形の「タンポ」を持って、いざ海女漁へ。

海に慣れない僕は2~3mの浅さでも四苦八苦。
浅い海のはずなのに、全然体が沈まない。
海底に潜って、獲物を採る以前の問題でした

海女さんは、普段10m近くも潜るんだそうです。

杉山さんの助けを借りて必死で頑張ったものの、
鼻から海水が入るは、足がつりそうだわでもう大変!
獲物は小さなサザエのみでしたが・・・(小さいので海へリリース)
海女漁の一端を垣間見させていただく貴重な体験でした!

ところで海女漁には、乱獲を防いで海の資源を守るためのルールが多くあります。
潜水の日数制限、回数制限、時間制限などさまざまな制限が決められており、
ボンベを背負わないのは、長く潜水して採りすぎることを防ぐため。
小さなアワビやサザエを採ることは禁じられ、
特にアワビは10.6cm以下のは採っちゃダメという厳しい決まりがあるので、
サイズを測る「寸棒」は漁の必需品なのです。

自然の恵みに感謝して、獲物を採り尽くさないように
いろんな約束事を長い間しっかりと守り続けてきた海女さんたち。
ところが、、近年では獲物が少なくなったのを実感する、と、杉山さんは顔を曇らせます。
獲物のエサとなる海藻が減っているからです。

「磯焼けがひどくてアラメが減り、それに伴ってアワビも減ってしまいました。
アラメを増やそうと移植してもうまく育たないみたいで。
温暖化の影響で水温が上がっていることも原因のようです。
あと、台風が少ないので水が入れ替わりにくく、澱んでヘドロ化すると貝には棲みづらい。
貝が好んで棲みそうな場所が明らかに減ってきています。
変なプランクトンが増えているのを見つけたりもします。
海女漁をしていると、海の大きなサイクルが狂ってきているのを感じます」

自然を相手に生きている海女さんだからこそ、その変化を敏感に感じ取っているのですね。
海女さんのリアルな言葉を聞き、温暖化の深刻さを改めて心に刻みました。

海女体験についてのお問い合わせは
→伊勢志摩ツーリズム【TEL】0596-20-2290

次なる目的地は「海女小屋体験施設 さとうみ庵」。
海女小屋とは、漁を終えた海女さんが冷えた身体を温めるための場所。
その本物の海女小屋そっくりに作った小屋で、
現役や現役を退いた海女さんのお話を聞きながら、
とれたての新鮮な魚介類を美味しくいただけるという施設がさとうみ庵です。

お話を聞かせていただいたのは、地元出身の林喜美代さん66歳。
海女51年目の大ベテランです!
「いやまだまだ上がいますよ。この地区では最高齢84歳やね」
そ、そうなんですね・・。
それにしても、林さんお肌つるすべ!
海で焼けているどころかかなりの美白肌です。ミラクル!

海女漁の獲物は、アワビやサザエの他、ウニ、トコブシ、
そしてワカメやヒジキ、テングサなどの海藻。
10月からはイセエビ、12月からはナマコも採ります。
2、3月から9月までの間に漁をして、
冬は他の仕事をする海女さんが多いそうですが、一部の人は冬も潜ります。
林さんは1年中漁をするそうで、今でも10m潜れるとか。すごい!!

この日に焼いていただいた海の幸は、ヒオウギにサザエ、
スルメイカ、カマスやアジ、そして豪華絢爛イセエビ!
すべて天然の塩味、というのが信じられないほどの旨さ。

噛めば噛むほど甘いプリプリのヒオウギ、濃厚で甘いサザエ。
香ばしいスルメイカを頬張った時は、
「・・本当に何もつけてない?醤油入れましたよね?だし、入れてない?」と
何度も確認してしまいました。

それにしてもこんなにいろいろ、どの海女さんでも採れるものなんでしょうか?
「やっぱり差はあるね。稼げる海女さんは目がいいし、
嗅覚というか、勘が鋭いことも大事やね。
あと、貝がいる場所をたくさん知っていること、場所を覚えていること。
私は、海底の地図が頭ん中に入ってるんよ」

…出ました、ベテラン海女さんの名言!
『海底の地図が頭の中に入ってる』!!カッコいい!!

ただ、海女さんの高齢化と後継者問題も実は深刻なのです。
昭和53年には日本全国で約9100人いた海女さんは、現在では全国で約1800人。
そのうち約800人が鳥羽市と志摩市にいます。
(2014年の鳥羽市海の博物館による調査では志摩半島に761人)
さらに志摩半島の海女さんの平均年齢は、65歳オーバー。

これは、すこし、心配になってしまいます。
でも林さんのお話を聞くと、希望もあるみたいです!

「うちの越賀(こしか)地区ではこの40年で1/10になって、今は24人。
でもその半分が男性なんよ。30代の人もいてね」

ええっ、男性の海女さん!?
どうやら男性の場合は「海女」ではなく「海士」と書くようで、
最近は少しずつ増えているんだとか。
僕の海女体験を指導してくれた杉山さんの旦那様も、実は海士さん。
若いIターン海女&海士の増加は、後継者問題への一つの解決策として
期待されているそうです。希望が持てますね!

また、海女さんが漁に出られない日の副業として、
さとうみ庵のような海女小屋体験も、観光メニューとして定着してきているそう。

海女漁は日本と韓国の済州島でしか行われておらず、世界的に見ても貴重な文化なので、興味を持つ海外の方も多いようです。

…また出た、ベテラン海女さんの名言その2!『海は薬』!!
いいな~、だから元気なだけじゃなくてお肌も綺麗なのかな。
いやお肌が綺麗なだけじゃありません。
海女体験の師匠をしてくれた杉山さんも、
海女小屋で海の幸を焼いてくれた林さんも、カラッと朗らかな笑顔が本っ当に素敵でした。
聞けば、海女さん同志でライバル意識は無く、みんなとても仲良し。
磯場に笑い声が絶えないことも、昔からの海女文化なんだそうです。

海の恵みに感謝しながら漁をして、歳を重ねるほどイキイキとたくましい女性たち。
海女さんの笑顔が最高の御馳走でした。海のパワーをありがとうございました!!

海女小屋体験施設 さとうみ庵
(運営:一般社団法人 志摩市観光協会)
TEL】0599-85-1212