“熱源”人材 - NETSUGEN JINZAI

広島

海は、遊び友達!

地域力を紡ぎ合わせる達人

馬場田 真一

SHINICHI BABATA

PROFILE
生年月日
1984年8月19日
主な活動エリア
広島県内
一般財団法人広島県環境保健協会の地域活動支援センター主任。広島県広島市出身。
宮島の環境を守るボランティア団体「みやじま未来ミーティング」事務局。2017年に仲間と一緒に立ち上げた一般社団法人「ふるさと楽舎」で豊かな里山づくりに挑戦中。カヌーやシャワークライミング(峡谷を登るアクティビティ)といった自然体験のガイド・インストラクターでもある。

ふるさとのマンパワーを繋いで、里海や里山を守る!

環境と健康を守るためのコミュニティ活動を支援する。
これが、環境保健協会(以下、環保協)の地域支援活動センターで活躍する馬場田さんのミッションです。

例えば、地域清掃や海岸美化などの活動に対して物的支援や人材育成の手助けをしたり、県内の事例・実績を収集してノウハウを共有したり。各団体の活動を活性化させることで、ひいては地域全体を元気にすることが究極の目標です。

住民活動をサポートするという業務の流れで、いつのまにか自分のライフワークになった仕事もあります。それは「みやじま未来ミーティング」。
宮島の自然を守るために環境保全に取り組む有志が集まった任意団体の名称ですが、環保協として関わっていた馬場田さんは2007年から自ら事務局に就任。以来、年4回の体験学習と年2回の海岸美化活動を実施しています。

「以前は業務の一環でしたが今では個人的にやっています。熱意ある仲間たちと共に海岸美化を継続してきたことで、トヨタ自動車や、広島に工場があるカルビー、宮島競艇、母校である修道大学など、さまざまな企業や団体と一緒に活動することができ、それらの企業から協賛をいただけるようにもなりました。ただ、僕は海岸清掃だけでは足りないと思っていて、海が好きな人を育てるというところにもっと注力したい。要は、海で遊ぶ時間をもっと増やしたいんです。僕がもっと遊びたいから(笑)」

自然環境や野外活動にまつわるアレコレに精通する馬場田さんは、「川や海でハードに遊ぶのが大好き!」
高校時代には山岳部でならし、広島県内の代表的な山々は完登。自然と対峙する精神力や体力、サバイバルスキルなどは山で学びました。

「自然って楽しい!という気持ちが原点にあって、それが今の仕事につながっています。僕には人生の師匠と呼べる人がいるのですが、“遊びの師匠”でもあるんです。とんでもない荒野を開拓してコテージを建てちゃうような、ネジが1本外れた破天荒な活動家と言いますか(笑)そんな人たちとの出会いに恵まれていて、師匠たちからは自然との付き合い方だけではなく、想いがある活動の尊さや、Uターン・Iターン人材を生かす大切さなども教わりました。そんな流れで、今の仕事や働き方にたどり着いた感じですね」

さまざまな住民活動に関わりながら行政と連携した業務も行っており、瀬戸内海全域の豊かな自然環境を守るために県が進めている『湾灘(わんなだ)協議会』にもメンバーとして参加しています。

湾灘協議会とは、瀬戸内海の水質や水産資源を巡るさまざまな課題に官民の多様な主体が連携して取り組むために、兵庫・岡山・広島・山口・香川の5県がそれぞれに設置している組織で、広島県では2017年、県内の海を「広島湾」「安芸灘(あきなだ)・燧灘(ひうちなだ)」「備後灘(びんごなだ)・備讃瀬戸(びさんせと)」の3つに区分して各海域で協議会を設けました。
海ごみ問題をはじめ、沿岸域のみならず内陸の自治体も一体となって対策を進めていくべきテーマについて関係者の意見をまとめていく重要な場です。

「豊かな海を目指そう!ってひとことで言っても、“豊かな海”とは誰にとってのどういうものなのか、立場によって考えが違うわけで、それを話し合うのが湾灘協議会。『このエリアでは海と人がこうありたいから、この水準を定めて守ろう』といった具体的な目標を協議して、それを目指すアクションを実行したい。そのためにはまず“豊かな海”の落としどころを皆で徹底的に話し合うことが必要です。環保協は、県内の美化活動等の実績を県と共有することで、県の取り組みに住民活動の状況を反映させることができました。議論をもっと活性化していくために、湾灘協議会には今後ますます濃く関わっていく予感がしています」

(↑)地域で説明会をしたり、講師を務めたりすることも

海は、ただ透明度が高ければいいというわけではありません。海の濁りには栄養という側面もあるからです。
瀬戸内海は近年、水質の改善に伴って栄養塩類が減少し、「貧栄養化」が進んでいて、養殖漁業にも影響が出ているといいます。豊かな里海を支えるのは山や川から流れ込む栄養。そこで、海の回復のためにも豊かな里山を作っていこうと思い立った馬場田さんは、2017年に仲間と「ふるさと楽舎」を設立。中山間地域で課題となっている放置竹林の整備や休耕田の整備を行うほか、自然体験イベント等で交流人口を増やすなど、里山を守り、活かすための取り組みを始めています。

(↑)小学校での環境学習。馬場田さんの授業は楽しい!

さらに「地域を盛り上げ、自分たちも楽しみたい!」と企画したのが地ビールづくり。ふるさと楽舎のメンバーが休耕田で作った米、ヒノヒカリを使い、広島市内の醸造会社「広島北ビール」とのコラボレーションで製造した「郷乃米麦酒(さとのこめびーる)」は、麦汁を造る工程で米を混ぜることで独特の味わいが生まれ、美味しいと評判です。

環境保全や地域の課題を自分ごと化して、楽しむ。
いつも軽快に、それでいて使命感は熱く、自己研鑽は抜かりなく。それが馬場田さんの仕事の極意です。

「僕の役目は、地域で光っている人や団体を見つけて繋ぐこと。そのためには僕自身も光ってなきゃいけない。だから勉強するし、必要なら資格も取るし、どんどん行動して経験を積む。そして本気で遊びます。そういう姿勢を貫くことで仲間をどんどん引き寄せて、地域全体でパワーアップしていきたい。山に住む人、街に住む人、海の近くに住む人、大人も子どももみんなが自然環境について考えることができ、自然を楽しむ術を知っている。そして、循環しあう里山と里海が維持されている。そんな未来を目指したいです!」

★ 編集後記 ★ 実はこんな人!

大学2年生の時、授業の講師として来ていた環保協の人が格好よくて憧れたのが、環保協との最初の接点だったとか。その後、縁あってバイトすることになり、そこで出会った異能の上司にまた惚れ込んで入社を熱望。「ここで働かせてください!って、“千と千尋作戦”で入り込みました(笑)」と本人談。意欲あるところに道は開ける。

自分を海の生き物に例えると?

「生き物そのものではないけど…牡蠣筏(かきいかだ)のようになりたい!広島の豊かな海で牡蠣を吊している牡蠣筏には、いろんな生き物が集まってくるんです。私の周りにもいろんな人たちが集まってほしいな、という願いを込めて」

自身が牡蠣筏。となると、ふるさとの恵みを吸収しながら育ってゆく牡蠣は…馬場田さんがサポートをするさまざまな活動団体の皆さんの想いでしょうか。大きく育った牡蠣の水揚げが楽しみですね!