“熱源”人材 - NETSUGEN JINZAI

沖縄

海はサードプレイス。自分をリセットできる“居場所”

チーム「ゴミすべ」の敏腕リーダー

友寄 隆秀

TAKAHIDE TOMOYOSE

PROFILE
生年月日
1982年5月12日
主な活動エリア
沖縄本島内
ビーチクリーンを行う任意ボランティア団体「ゴミがすべての始まりだった」代表。沖縄県中頭郡(なかがみぐん)読谷村(よみたんそん)出身。
2004年、大学生だった頃に「ゴミすべ」を立ち上げ、一時的な活動休止を経て2018年に活動再開。参加しやすさや楽しさにこだわった活動方針で年々参加者を増やしている。なお「ゴミすべ」は個人の活動であり本業は株式会社プレンティーの取締役。

「美(ちゅ)ら海」を守る!ごみ拾いで人つなぎ・人づくり

「ゴミがすべての始まりだった。」、通称「ゴミすべ」。
この一風変わったチーム名には、名付け親かつ団体代表である友寄さんの想いが込められています。

「主な活動は2ヶ月に1回のビーチクリーンですが、その集いから無限の可能性が発展していくようにと願って名付けました。ゴミすべで出会った人どうしでネットーワークが生まれて何か新しいことを始めたり、子どもたちの新たな学びやチャレンジにつながったり。そんな展開が未来に広がって、いつか過去を振り返ったときに『そう言えばこれって、あのごみ拾いが始まりだったよね〜』って言えるような、そんな場にしたいなと思って」

(↑)ある日の活動にて。コロナ禍でも清掃は続けてきました(左から二人目が友寄さん)

「ゴミすべ」は、元々、友寄さんが大学生時代に立ち上げた団体です。当時、NHKの連続テレビ小説「ちゅらさん」が大ブームとなり、沖縄と言えば美しい青い海というイメージが定着。しかし友寄さんは、違和感を感じていたと言います。

「ホテルの前の人工のビーチは綺麗でも、自然のビーチは全然違った。海ごみも不法投棄もひどくて、海にテレビや冷蔵庫、洗濯機が捨てられていたのを見たこともあったし、イメージと現実とのあまりのギャップに心が痛みました。それで『なんとかしなくては』と、大学の同級生で始めたボランティアの海岸清掃がゴミすべです」

当時は月に1回ビーチクリーンを行っていましたが、就職したり家庭を持ったりとメンバーの環境が変わったことで継続が難しくなり、2010年に活動を一旦休止しました。
そしてそれから8年。海ごみ問題への危機意識をもつ人が増え、「美ら海」を望む気運が高まってきたことを受けて、友寄さんをはじめ大学同級生のゴミすべ創生メンバーが再び集結して、2018年11月についに活動を再開。覚悟を決めての再出発となりました。

「今度こそ長く続けていきたい。そのためには無理をしないこと、そしてビーチクリーンを楽しむ工夫をしよう!と決めて、再スタートを切りました。頻度は2ヶ月に1回で、清掃時間は1時間だけ。手ぶらで来てくれても参加できるようにして、できる限り参加のハードルを下げました」

現在沖縄では数多くのビーチクリーン団体が活動していますが、中でも「ゴミすべ」は、活動エリアが広範囲であることや、家族連れでの参加が多いことが特徴です。
WebサイトやSNSでも積極的に情報を発信し、活動予定日をなるべく早く発表して参加希望者が予定を立てやすいようにしたり、海岸清掃と組み合わせてヨガや体験型ワークショップを企画したりして、より気軽に足を運べるような雰囲気づくりを心がけています。

(↑)清掃活動の後に常に何かを企画。子どもも参加したくなるように工夫

「ただのごみ拾いではなくプラスαの価値をつける。子どもたちが多く参加してくれるので、彼らにとって楽しく学べる場であるような工夫を考えています。例えば、バーコードトラッキング。漂着ごみのペットボトルのバーコードの数字を見ればどこの国で製造されたかが分かるんです。ごみがどの国から流れてきたのかを知り、なぜその国から流れ着いたのか?どんな海流に乗ってきたのか?など、世界地図を見ながら色んなストーリーを想像する。子どもたちが海ごみ問題をきっかけに視野を広げることができる、良い機会にもなりますよね」

また2019年には新たな取り組みとして、ビーチクリーンで拾う「シーグラス」と、沖縄の伝統工芸「やちむん」とを融合させた「シームン(seamun)」というオリジナルの陶器を開発しました。

「色とりどりのシーグラスを読谷村の陶眞窯(とうしんがま)に持って行き、同じ窯でやちむんと一緒に焼くと、窯の中で融合するんです。やちむんの器の中にシーグラスの色が溶け込んだような神秘的でオンリーワンな仕上がりはとても素敵なので、小皿などの器のほか、ペンダントやストラップに加工したりして、読谷村のおみやげとして育てたいなと思っています。ゴミすべで集めたシーグラスでおみやげを作り、売上の一部をまた清掃活動費として使う。シーグラス集め大会をやれば子どもたちも楽しんでビーチクリーンに参加してくれますし、色々とうまく回る、良い“循環”ですね」

(↑)土にシーグラスを組み合わせて焼くと…

(↓)独特の色がでて美しいヒビが入る。唯一無二の器に

ゴミすべの活動が持続的であるために、友寄さんが強く意識しているのが、次世代のリーダーを育てることです。
2020年2月、ワークショップで学んだことの集大成として発表会を開催した時には、小学1年から6年生までの多くの子どもたちが参加したそうです。

「子どもが自分たちで発信する機会を作ってあげることも大人の仕事だと考えているので、年に一度の発表会は今後も続けていきたい。正直な話、僕らの世代だけでは海は綺麗にならないでしょう。次の世代に繋ぎ、託すしかないんです。だからこそ次世代に向けた人材育成が必要です。…と言いつつも、厳しくやるわけではなくて、あくまで楽しく。これからも、子どもを含めたより多くの人を無理なく楽しく巻き込みながら、美ら海を守る活動を定着させていきたいですね」

大人も子どもも一緒に頑張るビーチクリーンチーム、ゴミすべ。
いつか未来の沖縄で、「美ら海が今も保たれているのは、すべてゴミすべが始まりだったね〜」と言われる日が来るのかもしれません。

★ 編集後記 ★ 実はこんな人!

「ゴミがすべての始まりだった。」といい、「シームン」といい、友寄さんのネーミングは独特で魅力的。シームンは、命名した後で調べたらたまたま沖縄の方言で「海に潜る」という意味のある言葉だったそうで、まさに絶妙!持ってますね〜

自分を海の生き物に例えると?

「ジンベエザメかな〜。いつもゆったりマイペースで、どーんと構えてる感じが良いなあ〜」

その落ち着いたお話しぶりから、ジンベエザメ的な悠々感、バッチリにじみ出ています!