“熱源”人材 - NETSUGEN JINZAI

沖縄

海は、大事にするのが当たり前!

海への意識改革の仕掛け人

金城 由希乃

YUKINO KINJO

PROFILE
生年月日
1979年9月7日
主な活動エリア
沖縄県内
株式会社マナティ代表取締役。沖縄県沖縄市出身。
海の環境保全活動の一環として化粧品等の商品開発・販売を手掛け、2017年に発売した「サンゴに優しい日焼け止め」は日本青年会議所主催JCI TOYP 2019で環境大臣奨励賞、生物多様性2018アクション大賞で審査員賞を受賞。

サンゴに優しく、人にも優しく。愛を行動で示そう

例えば「海の生きものを傷つけたくない」という想いや、「このビーチが綺麗だったらいいな」という願い。
そんな一人ひとりの優しい気持ちを後押しして、その人なりの小さなアクションにつなげる商品や仕組みづくりをしているのが、社会起業家の金城さんです。

金城さんが企画・開発した商品で、2017年4月に発売して一躍注目を浴びたのは、「サンゴに優しい日焼け止め」。
サンゴは、動物でありながら、体内にいる褐虫藻の働きで植物のように光合成も行う不思議な生き物です。魚たちに棲み家や産卵場所を提供し、海の生き物約50万種の4分の1はサンゴ礁に生息しているとも言われるほど、大きな生態系を担っています。

それなのに、従来の市販の日焼け止めにはサンゴに有害な化学物質が含まれているー。
その事実を知った金城さんは、サンゴにダメージを与えない日焼け止めを作るべく挑戦を始めました。

「シュノーケリングをしに座間味ビーチへ行った時、何気なく塗っていた日焼け止めがサンゴを傷つけると言われて大ショック。私は海が大好きなのに、まさか自分が、大切な海の生き物を殺す成分を何の疑いもなく撒き散らしていたなんて…。その衝撃がきっかけで、安心して使える成分の日焼け止めを自分で作って広めようって決めました」

それまでにオーガニックコスメを手掛けたこともあり化粧品には詳しかったものの、日焼け止めに関しては知識不足だったため、開発のための勉強や市場調査に邁進。サンゴについても論文を読み漁って独学し、日本ではサンゴ保全の意識が低いという現状も知りました。
一般的な日焼け止めに使われている、紫外線吸収剤と呼ばれる成分「オキシベンゾン」や「メトキシケイヒ酸エチルヘキシル」などがサンゴを傷つけ白化させてしまうということを突き止めた金城さんは、それらを使わず、かつ人の肌にも優しくて美容効果が高い日焼け止めを追求しました。

「調査と開発に2年以上かかりましたが、機能面でも価格面でも納得できる日焼け止めが完成し、クラウドファンディングで集めた資金で2017年に販売開始しました。天然素材にこだわっているのでサンゴはもちろん貝や魚にも優しいし、当然お肌にも良いですよ」

(↑)海の生き物への愛が感じられる楽しげなデザイン。サンゴを学べるリーフレットも制作

苦心の末に自信作を完成させたものの、自分は決して日焼け止め屋さんではない、と強調する金城さん。開発した目的は、サンゴの大切さを広く伝え、サンゴを守ろうと思う人を増やすこと。その想いとこだわりをストレートに商品名にしたことで、この日焼け止め自体が熱いメッセージになっています。

「実はマーケティングのプロからは、たくさん売りたいならこの名前じゃダメだよって言われたんです。でも、そこは譲れませんでした。私が発信したいことをそのまま商品名にすることで、これを見る人や買う人の気づきを促したい。地球環境にとってサンゴはとっても大事な存在で、サンゴに優しい日焼け止めを使うことが一人ひとりに出来るアクションなんだよって伝えていきたいです」

2020年夏、金城さんはさらに新しい取り組みを本格始動しました。そのプロジェクトの名前は「マナティ」。
旅先で気軽に、いつでもどこでもビーチクリーンを楽しめたら、自分も・地域も・環境もみんなハッピーになれるんじゃないか。そんな発想から生まれた、観光客と地域住民がごみ拾いを通じて交流できる仕組み、それがマナティです。

カフェや売店、宿泊施設などで「海を綺麗にしたい」という想いのある方々がマナティパートナーとなり、マナティ参加者(=漂着ごみを拾う人)はパートナーから500円で専用バッグ(=ごみ袋)や軍手をレンタルしてごみ拾い。集めたごみはバッグごとパートナーに返却し、パートナーはその自治体のルールに従ってごみを分別し処理します。参加費500円の内訳は、パートナーへの手間賃が半分、残り半分はごみ袋や軍手などを用意する事務局の手数料です。

「地域の協力なくごみ拾いをすると、分別されないまま放置されて適切に処理されないなど、様々なトラブルが起こりがちです。でもマナティのような協力関係があればトラブルを回避でき、参加者も気持ち良く、地域も助かる。参加者は『お金を払ってでもごみ拾いをしたい人』だから、パートナーと共感しあえる。つまりマナティは、繋がりたい人どうしが繋がれる仕組みでもあるんです。観光に行った先で、海を綺麗にできる上に愛情の交換まで出来るって、素敵ですよね!」

沖縄の地元企業であるオリオンビール株式会社がグループを挙げてマナティに参加し、沖縄内13ヶ所で一斉にビーチクリーンを実施するなど、県内ではじわじわと普及が進んでいるところ。現在のパートナー数は沖縄で40を超え、県外からの問い合わせも増えており、今後の広がりが期待されます。

「今は新型コロナウイルスの影響で観光客は少ないですが、この期間に提携パートナーを増やしたい。マナティにもっと参加しやすくなるようなアプリも開発中です。訪れる地域を楽しく綺麗にするという新しい遊び方、新しい観光スタイルとして沖縄から発信し、ゆくゆくは世界中に広がっていくことを目指します!」

サンゴに優しい日焼け止めやマナティを通じて実現したいのは、一人ひとりの優しい気持ちを行動で示しやすい社会。行動で繋がって価値観を共有できる仲間が増えることで、海を綺麗にできるばかりか世界平和にも繋がるはず!と、金城さんは信じています。

 

★ 編集後記 ★ 実はこんな人!

「人間関係が充実してないと人生つまんない。とにかく出会いが大切です。世界中のいろんな人と繋がりたい!マナティが広がるほどどんどん仲間が増えて嬉しいな♪」
…マナティの裏目的は、金城さんが友だちを増やすことだった!

自分を海の生き物に例えると?

「イラブチャーかな。寝袋を作るんですよ。なんだか楽しそうなところが良いです。私もいつも楽しんで、友だち増やして遊ぶことばっかり考えてますから(笑)」

いかにも南国風の青いイラブチャーが、透明なふわふわ寝袋(ゼリー状粘膜)に包まれてのんびりしている姿。ちゅらかーぎー金城さんとはイメージ遠い気もしましたが、言われてみれば、マイペースで妙に楽しげ、何となくご機嫌な雰囲気は確かに似ているかも…。鮮やかさで目を引く存在感も!