どこにも負けない和歌浦を“ヨットの聖地”へ!
絶景の宝庫として日本遺産にも指定されている和歌浦。その風光明媚な和歌浦湾に浮かぶリゾート島「和歌山マリーナシティ」の一画に、中村さんが活動拠点とする和歌山セーリングセンターがあります。
(↑)和歌山セーリングセンターで毎年行われる全国高校総体(インターハイ)の様子
和歌山セーリングセンターは、2008年5月にセーリング競技のナショナルトレーニングセンター(競技者の強化・育成拠点)として文部科学省から指定された施設で、レガッタ(ヨットレース)や強化合宿の開催、ナショナルチームやその候補選手の練習などに活 用されている、日本のセーリング拠点です。
中村さんはここで、ジュニアから熟年まで幅広い世代のヨット選手のサポートや、海の楽しさを伝えるヨット体験イベント、海での安全への備えや環境保全についての啓発活動を続けています。
「和歌浦の環境はヨット乗りには最高です。波が穏やかで安全度が高く、水深がそれほど深くないのでアンカーを落とすのに便利。山と緑に囲まれた美しい湾なので気持ちが良く、そして何より風がいい。陸に向かって一年じゅう西風や南風が吹いているのでセーリングにとても適しています。こんな恵まれた海で練習できて幸せだよって、いつも選手たちに言ってます」
20歳くらいの頃にたまたま誘われてヨットに乗り、一気に魅了されたという中村さん。競技選手にはならなかったものの、ヨット歴は40年になります。その魅力を聞いてみると…
「風の力だけで進むのでエンジン音が無い。すなわち波と風の音だけの世界に入っていける、これが他には無い心地良さです。そして、風の流れを感じて自分の手で操作して走る爽快感はストレス解消にもなります。あとは、海から得られるインスピレーションというか…海は二度と同じ状況にはならず、見える景色も体感温度も刻一刻と変わり続けるでしょ。だからいつも何か新しい発見があるんですよね。『今年のような夏はもう無い』と思うと、愛おしさすら感じます」
(↑)ヨットで味わう、一期一会の海(本人撮影)
ヨットを始めたことで海ごみを目の当たりにし、環境意識も芽生えました。今では子どもの体験や授業で海ごみ問題への啓発を欠かさず、イベント時にはペットボトルの使用を減らすためにオリジナルボトルを作るなど、ごみ削減へのアクションを行なっています。
和歌山セーリングセンターは、トップ選手だけではなく子どもたちがヨットに触れる場所としても重要な存在です。安全性が高く乗りやすい小型ヨットの体験会や、県の教育委員会とセーリング連盟が連携して実施している小・中学校を対象としたヨット授業は子どもたちの評判も上々だとか。
(↑)セーリング体験の前に小学生らに説明をする中村さん
「ヨット授業は年間20校、600人ほどが参加してくれて、ヨットの操縦だけでなく海ごみのことや、落ちた時に浮いて助かる方法なども教えています。みんなすごく楽しんで、いろんなことを学んでくれるのでこちらも嬉しい。和歌山の子はみんなヨットに乗れますよ!って言えたらいいな、と思いながら取り組んでいます」
和歌浦は、全国高校総体・インターハイのヨット競技の会場でもあり、全国持ち回りで開催されるインターハイ競技の中で、ヨット競技は和歌浦での固定開催となっています。
「つまり“ヨットの甲子園”なんですよここは(笑)。幸いマリンリゾートにあるわけですから、もっと人が来てヨットハーバーも活性化してほしい。海の美しさを守りながら上手に活用することもまちづくりには必要だと思います。海から陸を見ることで、改めて自分たちの街の美しさに気付けますしね。どこにも負けない和歌浦の海と、自然と一体になれるセーリングの楽しさを多くの人に知ってもらって、ここを“ヨットの聖地”に近づけていきたいですね」