“熱源”人材 - NETSUGEN JINZAI

新潟

海は、日常。

港町を盛り上げる“協働”プロデューサー

肥田野 正明

MASAAKI HIDANO

PROFILE
生年月日
1968年8月16日
主な活動エリア
主に新潟市内
株式会社バウハウス代表取締役社長。新潟県新発田市出身。
障がい者就労支援、飲食、新潟市と連携したまちづくり企画など複数の分野でソーシャルビジネスを展開。障がい者アートをレンタルするまちごと美術館CotoCoto(ことこと)館長、企業と障がい者のマッチング等を行う一般社団法人「I have a dream」代表。新潟開港150周年(2019年)の際は「志民委員会N・Visionプロジェクト」事務局長を務めた。川・海・港が市街地に近いという新潟市の特長を活かし、水辺の利活用を通じて持続可能な共生社会を目指している。

水辺を活かし、多様な人たちが結び合う空間づくりを!

新潟市のありたい姿を目指して続けてきたさまざまな活動は、「人と海とを繋げること」に重なっていたー
主にまちづくりの分野で活躍する肥田野さんと海との関係は、そんな感じです。

「自分にとって海は日常。生活のすぐそばにある新潟港の存在が大きいですね。新潟港は“かわみなと”(河川港)で、信濃川の河口に街があり港があり海がある。ここでは川・街・海の3セットが当たり前という感覚です。そのような“水辺”の演出、港エリアの賑わいをどう生み出すかにあれこれ知恵を絞っています」

新潟港は現在、西港と東港から構成されており、古代より信濃川の河口港として発展してきたのが西港。平安時代から蒲原津(かんばらのつ)として知られ、米を中心とした物資の物流拠点でした。以来長年に渡り日本海側の交易上重要な港として栄え、明治元年(1869年)には函館・横浜・神戸・長崎とともに開港5港として外国に開かれた、歴史ある国際港です。

そんな新潟港が開港150周年を迎えたのが2019年1月1日。肥田野さんは、その節目に向けた準備組織として2013年に設立された「志民委員会」の事務局長として立ち、市民が“ありたい新潟”をイメージできるようなイベントを仕掛けたり、議論や学びの場を設けたりと、さまざまな事業の企画・運営に携わってきました。

その中で、川港周辺により多くの市民が集えるようにと取り組んだのが、新潟市との官民協働プロジェクト「まちなかアウトドア」。信濃川の河口手前にある河川敷「やすらぎ堤」で、カヌーやウォーターバルーンといったさまざまな遊びを体験できるイベントで、大人にも子どもにも好評を博しました。

(↑)(↓)新潟市の“水辺”で行われるさまざまなレクレーション

この「まちなかアウトドア」を受けて、さらなる賑わいを演出しようと2016年から「ミズベリング信濃川やすらぎ堤」がスタートしました。
ミズベリングとは、「水辺+RING(輪)」、「水辺+R(リノベーション)+ING(進行形)」という意味を含んだ造語で、日本の水辺の新しい活用法を探るため国土交通省が推進しているプロジェクトのこと。肥田野さんは「ミズベリングやすらぎ堤研究会」のコアメンバーとして、いま現在も国や市、民間事業者と協力しながら活動しています。

「ミズベリングも開港150周年に向けた取り組みの一つと位置づけていました。川と街が融合した空間づくりを、行政と民間企業が一緒にやった社会実験という側面もあったと思います。新潟の水辺に賑わいを生み出すような新しい活用方法については今も模索し続けています」


肥田野さん曰く、これからのまちづくりにおける重要キーワードの一つは、インクルーシブ(inclusive)。
インクルーシブとは「包み込むような、包括的な、排除しない」という意味です。教育業界で使われることの多い言葉ですが、まちづくりの文脈においても、性別や国籍、年齢や病気などあらゆるバリアを取り払い、誰もが暮らしやすく多様な人が能動的に共生できる社会を目指すことが「インクルーシブなまちづくり」とされます。

2020年、新潟でサステナブルかつインクルーシブな社会を作っていくために活動するプロジェクト「SIP(Sustainable and inclusive design project)」を立ち上げました。

「例えば、ごみ拾いイベントを催してPETボトルを拾うよりも、誰でも簡単にリサイクル活動に参加できる仕組みを整える。フードロスを出さずに活かす方法や、スポーツ公園の利活用を考えたり、所謂“ハコもの”の水面下の部分やコンテンツそのものを、インクルーシブデザインの発想でもっと充実させていきたい。いま新潟駅は高架化の工事中で、完成予定の2023年には南北の壁が取っ払われて今の3倍くらいの広さの空間ができます。新しい駅と、繁華街、川、港、海。これらの動線を繋いで、点ではなく面として、新しい雰囲気のエリアに演出していきたいと考えています。官民のさまざまなプレイヤーたちに横串を刺して連携させていくのが大切かなと」

(↑)(↓)子ども用の手漕ぎボート。子どもが楽しめるイベント企画もお手の物

新潟港は、日本海側の国際拠点港として重要度が高く産業利用のイメージが強い一方、“かわみなと”として人々の交流拠点でもあり続けてきました。
その港町を、あらゆる市民にとって“日常使いできる場所”にしていきたいと語る肥田野さん。

「港や海、水辺は、『自然と行きたくなる場所』であってほしいです。そこに行けばいろんなことに出会える。新しい何かが始まっていく。だから行きたくなる…というのがいいです。新潟らしいルーツの魅力を大切にしながら、『サステナブルかつインクルーシブ』な新しい仕組みづくりやイメージづくりの部分で、これまでの協働経験や、若いクリエイター達とのネットワークが役立つと考えています。市民の斬新なアイデアを繋いでいきたいですね」

肥田野さんが思い描くインクルーシブな社会。
そのビジョンに欠かせないのは、海を愛する多様な人々が集い、賑わう“かわみなと”新潟港です。

★ 編集後記 ★ 実はこんな人!

ジャンルの垣根を超えた協働やパートナーシップを結ぶのが得意で、自分も楽しむことが大前提。新潟の寒い時期でも水辺で楽しめる!そんな街ができたらいいな!とさらに妄想中。雪国×水辺・・・!?また斬新なアイデアが生まれそうな予感!

自分を海の生き物に例えると?

「タコ。何本も手足があって、いろんなものを掴んでいく!」

肩書き多数、忙しくも楽しげに四方八方へ手を伸ばして柔軟に活躍する肥田野さん。“海の賢者”タコ、何気にぴったりかも。