“熱源”人材 - NETSUGEN JINZAI

長野

海とは、ワクワクの原点。

“楽しいごみ拾い”の伝道師

北村 優斗

YUTO KITAMURA

PROFILE
生年月日
2003年3月24日
主な活動エリア
高校時代は長野県内、大学進学後は大分、東京
立命館アジア太平洋大学1年生。長野県長野市出身。
長野高等学校在学中は第73期生徒会長。海ごみ問題の解決に情熱を燃やし、生徒会活動の他にも学生団体「Gomitomo」など複数の団体を立ち上げて代表を務めた。高校3年の夏に初開催したイベント型ごみ拾い「清走中」を事業化して今も継続しながら、世界のごみ問題解決のためのイノベーションを模索する日々。大学で環境について学ぶ一方、地球規模の社会課題を楽しく解決することを目指すベンチャー企業、株式会社Gabにも参画。

ごみ拾いオタクが世界を変える宣言! 「ごみ拾いを21世紀の遊びにします!」

「ごみ拾い、超絶楽しいー!!」

…真冬の新潟の海岸で、ハイテンションでごみを拾いまくる高校生が、いまだかつて彼以外に存在したでしょうか。
彼とは、2021年春に長野高校を卒業し、現在はAPU(立命館アジア太平洋大学)1年生でありつつ社会課題解決ベンチャーGab(ガブ)の一員としても活躍する北村優斗さんのこと。自称、いや正真正銘のごみ拾いオタクです。

「ごみ拾いにはゲーム性がある。すなわち遊びです!こんなに楽しくて、しかも社会を良くすることにもつながるなんて、最高じゃないですか?!」

長野高校時代から、海ごみ問題に関する研究論文を発表したり講演会を行ったりと数々の実績を残し、前代未聞のイベント型ごみ拾い「清走中」を成功させて事業化するなど、今や“世界を変える10代”の一人として注目される若者(※)。
そんな北村さんが掲げるテーマ、『ごみからワクワクを創造する』とは…?
(※)2021年8月放送「24時間テレビ 愛は地球を救う」の番組内で「EXIT × 最強ティーン10人 世界変えたいこと会議」に出演!

中学生時代を振り返ると、「実はごみ問題には全く無関心でした」と言う北村さん。公民の授業がきっかけで政治活動に興味を抱き、抜群の行動力を発揮して地元の政治家30人以上に突撃インタビューを繰り返した末、「自分は日本一信頼される政治家になる!」と燃えていた時期もあったとか。
名門・長野高校に進学してからは課外活動に熱中するようになり、大学生や社会人との交流も増えていきました。

そんな北村さんがごみ問題に関心をもったのは、高校2年生の6月。偶然見たテレビの報道番組で、世界中の海がごみで汚染されている現状を知ったのが事の始まりです。

「その原因や各国の取り組みなどを調べれば調べるほど、驚きや危機感が募って。そんな時たまたま、神奈川県の江ノ島でごみのポイ捨てがひどいという事実を知ります。10歳まで東京に住んでおり江ノ島海岸は大好きだったので、その惨状に衝撃を受けました。自分はいま海の無い長野県にいるけれど、『とにかく何かアクションを起こす!』と決意しました」

ここに海は無い。それならば…と、まずやってみたのが河川敷でのごみ拾い。そこで北村さんは感じました。「アレ?…意外と楽しいぞ、ごみ拾い」と。
川でごみを拾う楽しみとやり甲斐に目覚めた北村さんは、その年の夏には新たに学生団体を立ち上げてごみ拾いイベントを主催するなど、活動を広げていきました。

そして高2の冬。生徒会長に就任して学内でも学外でも様々な活動にいそしみ、体も心もちょっとお疲れモードになっていた頃に、たまたま妹と行った新潟旅行で、日本海に面する海岸でのごみ拾いを初体験します。それが冒頭で紹介したシーン。

「…なんだこの楽しさは!!初めて見るハングル語の空き缶やお菓子の袋。アイテム集めや宝探しのようなワクワク感。これってまるでゲームじゃん!!」と、若き“熱源”のパッションが炸裂します。このエンタテインメント性を強調することで、ごみ拾いをもっと多くの人に広められるに違いない…と、その後の活動の方向性が決まりました。

ごみ拾いの面白さを伝えるにはどうしたらいいか、ぐるぐる考えながら年を越して、翌年1月。
活路を開くヒントはまたもテレビ番組から到来します。それはフジテレビの人気番組「逃走中」。ハンターから逃げまくって賞金を獲得する「逃走中」と、ごみ拾いとを融合させて、街中で鬼ごっこしながらごみを拾ったらものすごく面白いのでは?!という斬新なアイデアが唐突にひらめいた北村さんは、「やった!これはいける!!」と確信したそうです。

「高校の先生からも助言をもらい、イベント名を『清走中』と命名。清掃と逃走との合体です。仲間たちと準備を重ねて、新型コロナのせいで3回も延期になってしまいましたが、ついに2020年7月24日に初めて開催することができました。子どもも大人もごちゃまぜの5~6人が1チームで、拾ったごみの総量や種類、LINEで通達されるミッションの達成度などをポイント換算して、合計ポイント数で競い合うゲームです。長野市で、幅広い年代の約100名もの人が参加してくれて、皆さん楽しんでくれて…、集まったごみの重さは40kg超。感無量でした」

大学受験を終えた2021年3月には、再び「清走中」を実施。県内5地域の予定が天候不順のため最終的には3地域(長野市、松本市、飯田市)での開催となったものの、トータルで300名以上もの人が参加しました。
北村さんをはじめスタッフが、地元である長野市以外でも奔走しプレゼンを繰り返した甲斐あってスポンサー企業は20社にも上り、事業化の面でも成功。広域にわたって協力者やパートナー企業・団体が増えたことで、今後も継続していける目処が立ちました。

(↑)企業スポンサーがつき、入賞チームにはスポンサーから賞品を贈呈。写真は長野市内の小学校にて

高校卒業後、現在は大学生として学びながらベンチャー企業Gabの一員としても働いている北村さん。尊敬し心酔する上司(CEO山内萌斗さん、COO北川晴也さん)の理解と協力を得ながら、自ら生み出した画期的ごみ拾いイベント「清走中」をより一層進化させるべく、試行錯誤の日々を送っています。

2021年7月には「諏訪湖編」「上田市街地編」も開催し、ミッションに地域の歴史ネタを練り込むなどして参加者がワクワクする仕掛けを増量。同年3月と7月を合わせると5地域で500名以上が参加し、ゲームを楽しみながら、計200kgのごみを拾い集めることができました。

「新型コロナウイルスの収束状況を見ながら、全国の各都道府県でも開催したい。各地にスタッフを配置して運営体制を整えていく必要もあります。参加者がもっと楽しめるように内容の質を上げ、『清走中』を、誰もが自分の街で楽しめる遊びとして世界で定着させたいです!」

北村さんが参画するGabは、「誰もが楽しくごみ問題の解決に取り組める社会を実現する」というミッションを掲げ、「清走中」のほか、ポイ捨て報告サービス「MyGOMI.(マイゴミ)」、エシカルな商品に特化した女性向け通販サイト「エシカルな暮らし」の運営等も行っており、ごみ問題を楽しく、心地よく解決するための独創的なアプローチが注目されています。

「自分はこれまで色んなことに挑戦してきましたが、どんな活動も持続するためにはワクワクすることが大前提なんだな、と分かりました。ごみ拾いに限らず『つまらないことをワクワクに変える』は自分の人生のテーマです!これはGabの理念と合致していて、だからこそ全力で取り組んでいます。実は昨日のミーティングで、僕たち、ものすごいアイデアを考えついちゃったんですよ…!まだ詳しくは言えないんですが、日本のごみ対策の中で一番のイノベーションだと思う。2022年の春にリリース予定です。きっと既成概念をひっくり返しますから、楽しみにしていてくださいね!!」

ごみ拾いを通して、世界にワクワクを増やそうと青春を疾走し続ける若き“熱源”の姿。
これからも、とくと見させていただきましょう!

★ 編集後記 ★ 実はこんな人!

「僕は、子どもの感性と大人の感性を合わせ持っているらしくて、変わってると言われることも多いです。ちなみに好きな歌手は、石川さゆり、森昌子、八代亜紀です」
…えっと…平成15年生まれですよね。
「同年代の周りの人とだいぶ違う、そんな自分が好きです」
胸張って堂々と自分らしくあり、独自路線を進む北村さん。だからこそ、自分にしかつくれない価値を生み出していけるんですね。

自分を海の生き物に例えると?

「カメです!小2の時からポケモンのナエトル(頭から芽が生えているリクガメのようなポケモン)が大好きで、リサイクルショップで50円で買ったナエトルのぬいぐるみをしょっちゅうぎゅ〜って抱きしめてました。10年くらい…」

ワクワクするものはもとより、愛らしいものやときめくものへの感受性が豊か、とでも言いましょうか…。超アグレッシブな活動家でありながら、いわゆるひとつの「ギャップ萌え」を誘発するのも北村さんの魅力なのだと納得!